― ご相続の「きほん」 ―
およそいくら
ご相続は、全体を通して
およそどれくらい費用がかかるでしょう。
このページでは、
STEP. 1で士業や業者ごとの費用の例を
STEP. 2で実際のご遺族さまの具体例を
それぞれご紹介いたします。
ご参考になさってください。
STEP. 1 士業ごとの費用例
― 弁護士 ―
(費用例)約20万円~200万円くらい
― 司法書士 ―
(費用例)約5万円~50万円くらい
― 税理士 ―
(費用例)約20万円~100万円くらい
― 行政書士 ―
(費用例)約5万円~50万円くらい
― その他の士業・業者 ―
■ 土地家屋調査士
(費用例)約20万円~150万円
▷ ご所有の土地の測量など行います。
▷ 土地の広さなど条件により前後します。
■ 不動産鑑定士
(費用例)約20万円~100万円
▷ 広い土地の評価額を抑えてくれます。
▷ 不動産の評価額により前後します。
■ 社会保険労務士
(費用例)約3万円~20万円
▷ 遺族年金などの手続きを手伝います。
▷ 手続きのボリュームにより前後します。
■ 宅地建物取引士
(費用例)約20万円~200万円
▷ 売却を手伝う、いわゆる不動産店です。
▷ 不動産売却の成約額により前後します。
■ 解体業
(費用例)約50万円~200万円
▷ 売却建物の解体、更地工事をします。
▷ 建物の構造や面積により前後します。
■ 信託銀行
(費用例)約100万円~300万円
▷ 相続全般の窓口サービスがあります。
▷ サービス内容により前後します。
STEP. 2 実際のご遺族様の例
実際にかかる費用や税金は、
ご遺産の額や手続きの内容によって
大きく前後するものです。
ここでは、次のような具体的なお客様の
事例を概算でご紹介いたします。
※ ご案内 ※
本ページの記載は実際のご相続事例を
税理士監修のもと一部修正したものを
参考としてご紹介しているものです。
▽ STEP 2-1. ご相続の内容 ▽
お父さまが逝去されました。
ご遺族(相続人)は、お母さまと成人のお子さまが3人(長女・長男・次男)の計4人。親族にはトラブルは特にありません。実家でおひとりになるお母さまは、次男と同居できることになりました。
本来なら、相続の分割割合は「母が2分の1、3人の子はそれぞれ6分の1ずつ」※となりますが、お母さまから「自由に分けられるはずだから、全員4分の1ずつにしよう」と希望され、みんなも了解し、そうすることにしました。
※国税庁HP(相続人・相続割合)はこちら
まず、35年前に3,000万円で買ったお家と、お父様の口座の現金500万円が残りました。そして、保険会社から死亡保険金が2,500万円おりました。受取人は「相続人」となっていて、ちょうど残された4人にそれぞれ625万円が指定されていました。
その後、お父様の口座を止めてあったので、医療費や葬儀費などはお母さまが150万円を立替えました。なお、お家の住宅ローンは完済していました。残されたお家は、一度お母さま単独名義に変更して、お母さまの名前で不動産店に売却を依頼することにしました。
その後調べたところ、お父様は一定額の年金収入のみだったため「準確定申告(故人の確定申告)」は不要※でした。また、「相続税」も非課税、お家の売却による「譲渡所得税」もなく(STEP. 2-2、2-3を参照)、税理士への手続き依頼はありませんでした。
お家を現金化するため、売却・解体・測量をそれぞれの業者に依頼しました。その費用はすべて、お家が売れた金額から支払えることになりました。そして、すべての支払い後に残った額を、お母さまの立替え額に配慮しながら4人で分けることで全員了解しました。
※政府広報HP(申告不要)はこちら
▽ STEP 2-2. 相続税の計算 ▽
(お引継ぎによる税金)
まずは相続税の計算です。
この税は「受継いだお金が大きい
ようなら税金に」という考え方です。
すこし難しいですが
「こんな計算があるんだな」程度に、
事例としてご参考ください。
■ 計算のもとになるもの
(A)相続財産※=1,900万円
▷土地:1,200万円(路線価9.5万円×登記簿126.32㎡)
▷建物:200万円(「令和○年度固定…明細書」の額)
▷現金:500万円(亡くなった日の残高)
※国税庁HP(土地建物評価)はこちら
(B)債務控除等※=150万円
▷葬儀費:120万円(葬儀・火葬など)
▷医療費:15万円(死亡時の病院費用など)
▷税金等:15万円(未払い光熱費や税など)
※国税庁HP(債務控除)はこちら
(C)死亡保険金=2,500万円
▷625万円(指定)×4人(相続人)
(D)保険金非課税額※=2,000万円
▷500万円(法定)×4人(相続人)
※国税庁HP(保険金非課税額)はこちら
(E)相続税基礎控除額※=5,400万円
▷3,000万円(法定)+600万円(法定)×4人(相続人)
※国税庁HP(基礎控除)はこちら
▽ STEP 2-3. 所得税の計算 ▽
(売れたことでの税金)
こんどは、譲渡所得税です。
「むかし買ったときと比べて高く売れたら
利益だから税」という考え方です。
計算はより複雑になります。
覚えることはありませんので、
ご参考までにご覧ください。
○ 所得税の計算1(基本条件)
■ 計算のもとになる情報(条件)
■ 現在わかっている費用
○ 所得税の計算2(売の諸費用)
■ お支払い1:司法書士へ
(相続登記等の費用)=175,000円
※相続登記(名義を故人から遺族へ変更)は売却の前に行うため「売れた時の諸費用」から見逃しがちですが、一般居住用の場合は「相続による不動産の譲渡費用」として認められています。
■ お支払い2: 不動産店へ
(仲介手数料など)=637,000円
■ お支払い3:土地家屋調査士へ
(測量などの費用)=738,000円
■ お支払い4:解体専門業者へ
(解体工事など)=1,450,000円
▷ 売の諸費用合計=300万円(d)
○ 所得税の計算3(減った価値)
ここで「建物」の減った価値を求めます。これを「減価償却費」といいます。(「土地」にはこの計算がされません)
■ 買った建物額が不明の時の計算
建物額=国税庁価額表※の額×床面積
価額表記載:104.2(昭和60年・木造)
=104,200円×105.29㎡
=10,971,218円
※国税庁HP(価額表)はこちら
■ 減価償却(減った価値)の計算
償却費=建物額×0.9×償却率※×年数
償却率記載:0.031(一般居住・木造)
=10,971,218円×0.9×0.031×35年
=10,713,394円
※国税庁HP(償却率)はこちら
▷ 減った価値=1,071万円(e)
○ 所得税の計算4(計算まとめ)
ここまで出てきた金額を使って、さいごに所得税の額を計算します。
■(譲渡)所得税の計算式
▷ 計算のしかたは3ステップ
1.取得費(A)
=買った額+買の諸費用-減った価値
2.譲渡所得(B)
=売れた額-(A+売の諸費用)
3.譲渡所得税の額
=(B)×税率※
※国税庁HP(税率)はこちら
■ この事例での計算
1.取得費= a+b-e
=3,000万円+200万円-1,071万円
=2,129万円(A)
2.譲渡所得= c-(A+d)
=1,700万円-(2,129万円+300万円)
=-729万円(B)
▷ 譲渡所得(B)がマイナスだったので、譲渡所得税はかかりませんでした。
▽ STEP 2-4. 手元に残るお金 ▽
(すべて終わって残ったお金)
やっと、いちばん大事な
「さいごにお手元にいくら残るか」
というお話しです。
ここまで STEP 2でご紹介した
ご遺族さまの例をもとにご説明します。
ご参考になれば幸いです。
■ お家ご売却で残った額
▷ 売れた額(c)-売の諸費用(d)
=1,700万円-300万円 =1,400万円(f)
■ さいごに手元に残るお金
▷ 全体で残るお金
=売却で残った額(f)+(預金)
=1,400万円+500万円
=1,900万円
▷ 一人あたりの手元に残るお金
=全体で残るお金÷相続割合+各保険金
=1,900万円÷4人+625万円
=1,100万円
さいごに、あらかじめお母さまが立替えていた「お父様の医療費や葬祭費など150万円」を4人で分けた「37万5千円」を、お子様3人からお母さまにお支払いされて、お手続きは全て終わりました。
<ご注意>
死亡保険金には、個人が指定されて受取るものなので「相続で分ける」という考え方がありません。また受取人や被保険者などによっては別の課税※が発生するため注意が必要です。
※国税庁HP(保険金の課税)はこちら
いかがでしょうか。
ご遺族さまによって前後しますが、
具体的な事例はきっと
ご参考になるものと思います。
なお、仮にSTEP.2の事例から死亡保険金(2,500万円)と現預金(500万円)が無かった場合で考えますと、「売れた額-売の諸費用=1,400万円」だけが残りますので、これを4人で分ける(一人あたり350万円)ことになります。ご参考になりますと幸いです。